File1 「描いたもの」

幼少の頃。僕は小児喘息がひどくて、月に何日も学校を休んでいた。その為友達とはなかなか親しくなれず、授業も常に遅れがち。とにかくすべてにおいて、クラスのみんなと同じようなペースで取り組むことができなかった。
 
 そんなある日。例によって発作で休んでいた僕は、学校からの連絡帳を自宅に届けてくれた友達から、その日の授業の内容を聞いた。図工の時間に「21世紀」というテーマで絵を描いたのだという。そして、それは単なる授業中だけの作品ということではなく、優秀な作品を仙台市のコンクールに出展するというのだ。
 それを聞いた僕はすごく興奮した。僕は絵を描くのが大好きだった。風景画とか人物画とかはあまり好きではなかったが、想像したイメージを書き表すのが得意だったのだ。
 どうしてもコンクールに作品を出したいと思った僕は、急いで自宅の病床の中で絵を描いた。みんながどんな絵を描いたのかを考えると少し不安だったが、なんとか自分なりの「21世紀」を表現して完成。無事にコンクールへの提出に間に合うことができた。


 その作品、「僕の21世紀」は、その年の仙台市の優秀賞を受賞した。現在はもう無くなってしまったが、仙台駅前にあったデパート「緑屋」で作品が展示され、家族や幼なじみの友人達が一緒に喜んでくれたあの瞬間を今でも鮮明に憶えている。

 なぜ僕の作品が優秀賞に選ばれたのか。それは描写の技術的な部分でも、色合いの鮮やかさでもなかったと思う。おそらく大人たち審査員の目に留まったのは、全体の構図と、ど真ん中に描かれたある物の存在だった。
 デパートに展示された作品の下には、作品名、学校名、学年、氏名と書かれ、最後にちょっとした作品の説明文が付けられている。もちろん説明文は自筆である。僕はこんな感じで書いたと記憶している。


作品名 「ぼくの21せいき」
仙台市立○○○○小学校 ○年 ○○○ ○○

この絵の説明

「21せいきは、100かいだてぐらいの、ものすごくおおきなビルがいっぱいたっています。でも、それいじょうにおおきなものがのびているでしょう。まんなかにかいた、まわりのビルよりもたかいものは、さくらの木です」
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三十数年後。
僕は現在、ある不動産開発会社の部長という肩書きにある。


~File2へ続く~

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